アトリエ湘 住谷 重光

 

 ここ15年程、平均すると1年に2回ずつ個展を開催してきた事になります。

絵は描く人だけが生み出すものではなく、描く人、見る人、ギャラリーという場を提供する人の循環で生まれてくると思うのです。

敬愛する、坂本繁二郎や、ゴッホの言葉に「絵描きは人に認められるようになったらおしまいだ」というのがあります。

私は、無所属で、人と競うのをやめて、自己の絵を描く環境を整えて生きる生き方を選びました。

冷静に考えて20歳頃は、経済等、環境を考えると、画家としてやっていくには、絶望的でしたが、ここまでこられたのは、周りの人の助けが大きいのです。

凡人の私が、いかにして芸術家になっていけるかという実験だと思って続けています。

大切なのは、精神の自由と、感動と、そして、思いやりです。

最近、少しずつ自分にとっての芸術が、はっきりしてきています。

観念的にならないように、例えば桜の樹を描く事によって、水の循環に気づいていくという様に、物を前にして物自体を描くのではなく、関係性を描くように進めています。

存在しているものは、流れゆくものの連鎖ですが、その根底には、美という関係存在があります。

人は、それにいきなり触れることは出来ません。

だからこそ、芸術・宗教・哲学が必要なのだと思います。

つまり、通路のようなもの、方便のようなものです。

「今」という時間にすべてが在ります。

自分の呼吸とリズムを大切にして、瞬間の積み重ねで暮らし、絵を制作していきたいと思っています。